トンボと世界


トンボと日本の歷史 - 漢字の意味 - 世界のトンボ - ヨーロッパとトンボ

トンボと日本の歷史(トンボと日本の歴史)

日本に稻作(稲作)が傳はった(伝わった)のは 繩文時代(縄文時代)の末期(=紀元前15世紀頃〜紀元前10世紀頃)、 廣く(広く)稻作(稲作)が行はれるやうに(行われるように)なったのは 彌生時代(弥生時代)(=紀元前3世紀頃〜紀元後3世紀頃)だとされてゐる(いる)が、 トンボが日本人にとって身近な昆蟲(昆虫)となったのも 恐らく この頃と思はれる(思われる)
實際(実際)、この時代(彌生時代(弥生時代))のものと思はれる(思われる)銅鐸(どうたく)には、トンボの繪(絵)が彫られたものも多い。*¹
トンボといふ(いふ)呼び名は、"田んぼ"がなまったものであるとの説もあり、トンボと稻作(稲作)との關はり(関わり)は深い。

※呼び名の由來(由来)には、"飛ぶ棒"や"飛ぶ穗(飛ぶ穂)"が語源であるといふ(いう)説もある。 どの説にしろ、はっきり 斷定(断定)されてゐる(いる)ワケではないが。

銅鐸とは、紐で吊り下げ 鐘のやうに(ように)使はれてゐた(使われていた)のではないかと 考へられてゐる(考えられている)もの。金屬(金属)が珍しい時代、その音は 神聖(神聖)なものであったのだらう(だろう)。 靑銅製(青銅製)で、出土したものは 靑綠色(青緑色)に變色(変色)してしまってゐるが(いるが)、本來は(本来は)やや金色に近い 赤金(あかがね)色である。 大きさ(髙さ(高さ))は 初期のものでは 數十cm(数十cm)。時代が下ると大きくなり 1mを超えるものも見つかってゐる(いる)が、この頃は 權威(権威)の象徴としての意味が 大きくなってゐた(いた)のかもしれない。
なほ(なお)、銅鐸は 紀元200年頃に 忽然と姿を消す。破壞(破壊)された銅鐸が多數(多数)見つかってゐる爲(いる為)、意圖的に(意図的に)製作が中止されたやうである。ちょうど 卑彌呼(卑弥呼)が王として共立された時代であり、國(国)の統合と關係(関係)があるとの説もある。(その後、權威(権威)の象徴として 鏡が登場する。)

呼び名といへば(いえば)、日本の古い呼び名の1つに「秋津島(あきつしま)」といふ(いう)ものがあるが、アキツとはトンボのことである。
古墳時代(大和時代)、山頂から國土(国土)を見た神武天皇(神武天皇)(初代天皇)が、「アキツが交尾している姿のやうだ(ようだ)」 と言ったのが その由來(由来)だといふ(いう)

※ここでいふ(いう)日本は古墳時代の日本なので、現在よりもはるかに小さい國(国)であったと思はれる(思われる)
※秋津島は、秋津洲と書くこともある。また、あきづしまと讀む(読む)こともある。
※本州を指す名稱(名稱)として、古事記に「大倭豐秋津島」、日本書紀に「大日本豐秋津洲」が登場してゐる(いる)。 どちらも「おほ-やまと-とよ-あきつしま [おお-やまと-とよ-あきつしま]」と讀む(読む)
※神武天皇(神武天皇)は、神話(神話)の世界では 紀元前8世紀頃〜紀元前6世紀頃の人物とされてゐる(いる)が、歴史學(歴史学)的な 證據(証拠)が無い爲(為)、 實在(実在)してゐた(いた)とすれば 西曆(西暦)200年頃(=彌生(弥生)時代末期〜古墳時代)の人物であらう(あろう)と推測されてゐる(いる)

參考(参考)
神戸市立博物館 桜ヶ丘5号銅鐸 (別サイト、別窓表示)

また、その身近な昆蟲(昆虫)を、昔から日本では「勝ち蟲(勝ち虫)」としてきた。
害蟲(害虫)を退治し、前向きに飛ぶ(後ろ向きには飛ばない)ことから、縁起がいゝもの(いいもの)とされたのだ。
時代はだいぶ下るが、戰國時代(戦国時代)には、トンボが描かれたものを身につけて戰(戦)(いくさ)に行った武將(武将)もゐた(いた)といふ(いう)
兜や刀の裝飾品(装飾品)として トンボがデザインされたものも 實在(実在)する。

※雄略(ゆうりゃく)天皇(21代天皇)の腕を刺したアブを トンボが攫(さら)っていったのが由來(由来)だと言はれる(言われる)
※餘計な(余計な)話をすると、トンボは 後ろ向きにも飛ぶ (長距離ではないが)。 むしろ、空中で 意圖して(意図して)後退できる昆蟲(昆虫)は トンボぐらゐ(ぐらい)のやうな(ような)(気)もするが…。

日本刀の拵へ(拵え)=外裝(外装)にデザインされた 勝ち蟲(勝ち虫)の例。(※この拵へ(拵え)には 刀身は入ってません)
 
これは 景色の一部としてのワンポイントだが、もっと 大々的にトンボが主張してるデザインもある。
大量生産品ではないため、一點一點(一点一点)デザインは違ふ(違う)


漢字の意味(漢字の意味)

「蜻蛉(とんぼ)」といふ(いう)字の、青と令には"美しい"といふ(いう)意味があり、蜻蛉といふ(いう)字は "すべてが美しい"という意味を持ってゐる(いる)らしい。
トンボといふ(いう)(虫)は、昔の人々に、美しい蟲(虫)だと 思はれて(思われて)ゐた(いた)のだらうか(だろうか)

※蜻蛉といふ(いう)字には、とんぼの他に あきつ(あきづ)・せいれい・かげろふ(かげろう)といふ(いう)讀み方(読み方)もある。
※古來(古来)から 嚴密な區別(厳密な区別)があったとは思へない(思えない)が、アキツ・セイレイが トンボの別名であるのに對し(対し)、蜉蝣(カゲロフ(カゲロウ))は 分類上 トンボとは別の昆蟲(昆虫)である。

サナエトンボ[さなへとんぼ]のサナエ[さなへ]は 漢字で「早苗」と書く。
この早苗とは、水田に移し植ゑる(植える)(稲)の苗のこと。田植ゑ(田植え)の時期に多く出現するトンボなので、サナエと呼ばれるやうに(ように)なったといふ(いう)

ヤンマは「蜻蜒」、ヤゴは「水蠆」と書く。蠆とは蠍(さそり)のこと。
蜻蜒の"蜒(虫延)"が"蜓(虫廷)"と書かれることもある。 中國語(中国語)のサイトなどでは 後者"蜻蜓"の表記の方が多いやうに(ように)思ふ(思う)。 形が似てゐる爲(いる為)に 混同されて 2パターン定着したのか、それとも "蜒"が 日本においての "蜓"の代用字なのか 分からないが。

※ヤゴの語原はヤンマの子であるといふ(いう)説がある。


世界のトンボ

この地球上で、蜻蛉目(トンボ目)に屬する(属する)昆蟲(昆虫)は 約5500種 確認されてゐる(いる)
5500といふ(いう)(数)は、他の昆蟲(昆虫)と比べると 多い方ではない。 世界には、何萬(何万)、何十萬(何十万)と 種が 確認されている蟲(虫)がたくさんゐる(いる
テフ(チョウ)は 約20000(2萬(万))種、ガは 約100000〜200000(10萬(万)〜20萬(万))種。 (なほ(なほ)、分類上は テフ(チョウ)もガも 鱗翅(りんし)目の昆蟲(昆虫)である。)
カブトムシやクハガタ(クワガタ)の他、カミキリムシ、ホタルなどの甲蟲(甲虫)類(分類上は 鞘翅(しょうし)目)は、約300000〜400000(30萬(万)〜40萬(万))種。
ハチとアリの仲間(分類上は 膜翅(まくし)目)だと 約130000(13萬(万))種。
…と、かう(こう)やって數字(数字)を竝べる(並べる)と、どうも トンボだけ 桁が違ふ(違う)(少ない)が、 まぁ…多けりゃいいってもんでもないか。
10萬(万)、20萬(万)と言はれて(言われて)しまふ(しまう)と 氣(気)が遠くなるが、5000〜6000なら 全制覇も なんとかなりさう(そう)に思へて(思えて)くる 不思議。 さう(さう)いった意味では、案外 ちょうどいい數(数)なのかもしれない。

日本では おほよそ(おおよそ)200種(亞種(亜種))が確認されゐる(いる)が、狹い(狭い)國土(国土)にこれだけの種類がゐる國(いる国)は珍しく、 日本をトンボの國(国)と呼んでも過言ではない。
例へば(例えば)、面積が日本の60倍もある 北アメリカ大陸でも、トンボの數(数)は 500種にも滿たない。 單純に(単純に)面積に比例して増えると假定(仮定)して計算すれば、200×60で 12000種である。 北アメリカを基準にして 逆に考へる(考える)なら、面積が60分の1の日本は、500÷60(※實際(実際)は 500もゐない(いない)けど多めに見積もって)で 8.333…と 10種にも屆かない(届かない)
日本におけるトンボの生息密度が、世界的に見ても とても高いのが お分かり頂けただらうか(だろうか)

トンボ約5500種のうち、世界最大のトンボは、ハビロイトトンボとテイオウムカシヤンマ[ていわうむかしやんま]。體長(体長)は約150mm。
日本最大のトンボであるオニヤンマは體長(体長)約100〜110mm。
世界最小のトンボは、ハッチョウトンボ[はっちやうとんぼ] (右寫眞(写真))。このトンボは日本にも分布してゐる(いる)が、 東南アジア産のものは 日本のもの(體長(体長)約20mm)より小さく、體長(体長)約15mm。

ハビロイトトンボ Megaloprepus caerulatus Drury, 1782
體長(体長):約150mm。分布:中南アメリカ。分類:均翅亞目(均翅亜目)ハビロイトトンボ科Pseudostigmatidae。
近緣(近縁)の オオフシナガイトトンボ[おほふしながいととんぼ] Mecistogaster lucretia (Drury,1773) も 大型。
テイオウムカシヤンマ[ていわうむかしやんま] Petalura ingentissima Tillyard,1907
體長(体長):約150mm。分布:オーストラリア。分類:不均翅亞目(不均翅亜目)ムカシヤンマ科。


ヨーロッパとトンボ

日本では古くから親しまれてきたトンボという昆蟲(昆虫)。 しかし、何處(何処)に行っても トンボに良いイメージがある といふ(いう)ワケではない。
ヨーロッパでのトンボの別名は"魔女のつかひ(つかい)"。
子供が惡い(悪い)ことをすると、トンボがやってきて 赤い針(腹部)で口を縫ってしまふ(しまう)といふ(いう)言ひ傳へ(言い伝え)があるんだとか。
そのため、授業などでトンボに觸れる(触れる)時は、まづ(まず)、「トンボは噛みません」と言ふ(言う)らしい。 ……いや、噛みますけどね。
ヨーロッパ産のトンボは、模樣(模様)が細かかったり、派手な色をしてゐたり(いたり)するが、それが 嫌はれる(嫌われる)一因となったのかもしれない。


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