トンボの生活


▼  トンボの一生 - 羽化 - 飛行術 - 繩張り - 交尾〜産卵 - 逆立ち

トンボの一生

トンボの幼蟲(幼虫)ヤゴと呼ばれ、水中に住んでゐる(いる)
そのため、トンボは池や川・水田など(もしくはその近く)に産卵する。

孵化(=卵から孵ること)したばかりの幼蟲(幼虫)前幼蟲(前幼虫)と呼ばれ、まだヤゴとは違った姿をしてゐる(いる)。 前幼蟲(前幼虫)が脱皮すると(ヤゴの姿をした)1齡幼蟲(1齢幼虫)になる。
※前幼蟲(前幼虫)を1齡幼蟲(1齢幼虫)とする研究者もゐる(いる)
たくさん食べて大きくなったヤゴは、脱皮し 古い皮(殼(殻))を脱ぎ捨てる。 脱皮したヤゴは その囘數(回数)に應じて(応じて)齡數(齢数)を増やして呼ぶ (1齡幼蟲(1齢幼虫)[脱皮經驗(経験)1度] → 2齡幼蟲(2齢幼虫)[脱皮經驗(経験)2度] → 3齡幼蟲(3齢幼虫)…)。
脱皮直後は、まだ體(体)がやはらかい(やわらかい)ので、別の水生昆蟲(水生昆虫)やヤゴに狙はれ(狙われ)やすい。
羽化直前のヤゴは終齡幼蟲(終齢幼虫)と呼ばれるが、終齡幼蟲(終齢幼虫)になるまでの脱皮の囘數(回数)は種類によって異なる。

成蟲(成虫)になる準備が整ったヤゴは、木や草・壁などに登り羽化(=成蟲(成虫)になること)する。 羽化は夜中や早朝に行はれる(行われる)ことが多い。
トンボは不完全變態(不完全変態)なので、蛹にはならない。
※成蟲(成虫)になる前に蛹になるものを完全變態(完全変態)、蛹にならないものを不完全變態(不完全変態)といふ(いう)
成蟲になれる状態であっても、羽化の時期を逃し、同じ年に生まれたトンボたちから 1年遲れ(遅れ)で羽化するヤゴもゐる(いる)といふ(いう)

羽化に成功し成蟲(成虫)になったトンボは、蚊・蛾・蜂などの蟲(虫)を食べて生活し、成熟していく。(もう脱皮はしないので、これ以上大きくなることはない。)
成熟したトンボは交尾し卵を産む。そして、力盡きた(力尽きた)トンボは死んでゆく。


羽化

       
 左から、羽化(倒垂型)、羽化失敗、翅芽が白い羽化直前のヤゴ(右)

成蟲(成虫)になるためには必ず行は(行わ)なければならない羽化。これは、トンボにとって とても難しく 危險(危険)を伴う行動である。
羽化中は天敵に見つかっても逃げることが出來ない(出来ない)
また、殼(殻)からうまく體(体)が拔け(抜け)なかったり、羽化中に水を浴びて翅がうまく伸びなかったりすると、自然界では生きていけない。

羽化には倒垂型直立型があり、種類によって羽化の形が違ふ(違う)
羽化の途中で、ぶら下がった状態で休憩するのが倒垂型。上を向いたまま休憩するのが直立型。
ムカシトンボ・ヤンマ・オニヤンマ・トンボ科は倒垂型、イトトンボ・カワトンボ[かはとんぼ]・サナエトンボ[さなへとんぼ]科は直立型。
カワトンボの中には、倒垂型と直立型の中間的な形の羽化をするものもゐる(いる)

關聯(関連)ページ: オオアオイトトンボ[おほあをいととんぼ]の羽化(直立型)
關聯(関連)ページ: ヤブヤンマの羽化(倒垂型)

-羽化前のヤゴ-
羽化が近附く(近付く)と、アゴの筋肉が衰へ(衰え)何も食べられなく(捕獲できなく)なる。
右の寫眞(写真)は、羽化直前のヤゴ。筋肉が衰へ(衰え)、アゴは既に拔け殼(抜け殻)のやうな(ような)状態になってゐる(いる)
同じ頃に氣門(気門)が開き、水面近くや陸上で生活するやうに(ように)なる。
また、翅芽が膨らみ(翅芽が白っぽくなるヤゴもゐる(いる))、複眼も大きくなってくる。

-羽化直前のヤゴ-
羽化の時が來る(来る)と、ヤゴは羽化する場所を探して移動する。自分の住んでいた所から数百mも離れた場所へ移動することもある。
羽化する場所を決めたヤゴは、體(体)を大きく振って周りに障害物がないことを確認した後、羽化の體勢(体勢)に入る。

-羽化直後のトンボ-
羽化の直後は、口が開かないため、しばらく(1〜2日くらい)は何も食べられない。
脱皮直後のヤゴ同樣(同様)、まだ體(体)がやはらかく(やわらかく)、別の肉食昆蟲(肉食昆虫)やトンボなどに狙はれ(狙われ)やすい。


飛行術

トンボは、翅を前後で別々に動かして飛ぶ。
前後の翅を 別々に動かして飛ぶため、蝶のやうに(ように)上下に大きく動くこともなく、一定の高度を保ったまま直進できる。 翅を動かす角度を調整することで、空中の一點(一点)に留まる 靜止飛行(静止飛行)(ホヴァリング)もお手の物である。
種類によっては、時速100km以上で飛べるらしい。
前肢は複眼の裏に、中肢と後肢は胸部の下にたゝんで(たたんで)飛ぶ。
また、飛行中 頭は水平になっている。 頭を水平に保つ生物は他にもいて、バランスをとる爲(為)だと言はれてゐる(言われている)。 トンボの頭部には、脊椎動物の三半規管にあたる器官があるのかもしれない。

ヤンマなどの大型のトンボの翅を見るとよく分かるが、トンボの翅は 前方(前縁部)の黒い脈(翅脈)は太く硬く、對し(対し)、後方の脈は細かいつくりをしてゐる(いる)
前方は 風を切る必要がある爲(為)に頑丈に、後方は 無駄な抵抗なく 風を流す爲(為)に柔かくなってゐる(いる)のだと考へ(考え為)られてゐる(いる)
もっと言ふと(言うと)、前方の脈は 横から見ると山のやうに(ように)ギザギザしてゐる(いる)が、 これは、微かな風でも浮力を生む爲(為)の構造。この窪みに空氣(空気)が入ってくることで 小さな渦が發生(発生)し、それによって生まれる風力を利用してゐる(いる)のださうだ(そうだ)。 風車の研究過程で發見(発見)されたことで、發電用(発電用)の風車の羽にも 應用(応用)されてゐる(いる)
言はれて(言われて)みれば、確かに、ほとんど風の無い日に 大して羽ばたきもせずに 空中に浮いてゐる(いる)姿は、よく見る。 まぁ 風が無いと言っても、それは あくまでも人間の感覺(感覚)での話で、彼らにとっては十分な風といふ(いう)ことなのだらう(だろう)


繩張り(縄張り)

トンボの♂は繩張り(縄張り)を張る。繩張り(縄張り)は 産卵しに来た♀を捕へる(捕える)ための陣地で、♀を捕へる(捕える)と交尾するのである。
※繩張り(縄張り)は 全ての♂が張るといふ譯(いう訳)ではなく、 特定の區域(区域)に留まらず ふらふらと ♀を搜す(捜す)♂もゐる(いる)
♀は大歡迎(大歓迎)の♂だが、別の♂が自分の繩張り(縄張り)に侵入すると追ひ出さう(追い出そう)とする。
種類によって違ひ(違い)はあるが、もともとの繩張り(縄張り)の主が 後ろから 侵入者を追ひ(追い)かけて行き、繩張り(縄張り)から追ひ出す(追い出す)といふ(いう)パターンが 多いやう(よう)である。
繩張り爭ひ(縄張り争い)は、もともとの繩張り(縄張り)の主が勝つことが多いらしいが、 爭ひ(争い)が長引くと いつの間にか侵入者に追はれる(追われる)形になり、繩張り(縄張り)を奪はれて(奪われて)しまふ(しまう)といふ(いう)ことも あるやうだ(やうだ)

トンボは、違ふ(違う)種類同士で爭っても(争っても)無駄に體力(体力)を消耗するだけだといふ(いう)ことを知ってゐるやうで(いるようで)、(大きさや色などが)自分と似てゐない(いない)トンボならば ♂が入ってきても 追ひ(追い)囘さない(回さない)
ただ、性格による違ひ(違い)もあるやうで(ようで)、侵入するもの全て(トンボでない蟲(虫)まで)を 追い囘す(回す)♂も稀にゐる(いる)
個人的に見たことのある 別種間での繩張り爭ひ(縄張り争い)を擧げる(挙げる)と、 ギン 對(対)オオルリボシ[おほるりぼし]、タイワンウチワ[たいわんうちは] 對(対)ハラボソ、タイリクショウジョウ[たいりくしやうじやう] 對(対)ベニトンボ、 ヒメハネビロ 對(対)オオキイロ[おほきいろ] など。爭ひ(争い)といふ(いう)よりは 一方的に 突き飛ばされてるやうに(ように)見えることが多いが。

なほ(なお)、トンボを含めた多くの昆蟲(昆虫)には 太陽を背にして飛ぶ本能がある爲(為)、夜中に 電燈(電灯)の下(もと)で放すと、常に 背中側を明かりに向けようとして ぐるぐる囘ってしまふ(回ってしまう)


交尾〜産卵

♀を見つけた♂は尾部附屬器(尾部付属器)で♀を捕まへ(捕まえ)聯結(連結)する。
聯結(連結)してゐる(いる)状態をタンデム[Tandem]とも言ふ(言う
※"tandem"はラテン語で"一體(一体)"("遂に"といふ(いう)意味もある)。 ラテン語に由來(由来)する言葉なのかどうかは知らないが。
   ↓
♂は、生殖器(腹部の先の方にある)から副生殖器へ精子を移す。これを移精といふ(いう)
移精は、聯結したまゝ(連結したまま)行ふ(行う)
   ↓
一度、聯結(連結)した状態に戻る。
   ↓
交尾
♀の生殖器と♂の副生殖器をくっつける。
♂は、♀が持っている別の♂の精子をかき出し、自分の精子を♀に渡してゐる(いる)らしい。 ♀は、自分の持つ卵を全て受精させられるだけの精子を一度に受け取ってゐる(いる)といふ(いう)。 この段階では卵はまだ受精してゐない(いない)
この状態は よく、ハート形 と表現される。
   ↓
産卵する。
♀は、産み落とす直前に卵を受精させる。

移精や交尾は、飛びながら行ふ(行う)ものと 止まって行ふ(行う)ものがゐる(いる)。また、交尾は 何時間もかゝる(かかる)ものもゐれば(いれば)數十秒(数十秒)で終はる(終わる)ものもゐる(いる)
産卵は、聯結したまゝ(連結したまま)行ったり(聯結産卵(連結産卵))、聯結(連結)せず ♂が見張ってゐる(いる)(警護)ところで♀が産卵したり、 ♀だけで單獨産卵(単独産卵)(見張りなし)したりする。
同じ種類でも、状況やトンボの性格によっては、違ふ(違う)方法で産卵することがある。

 
産卵方法
   
産卵方法
飛翔産卵飛びながら 飛水産卵腹先で水をかいて卵と一緒に飛ばす
靜止産卵(静止産卵)止まったまま 接水産卵腹が水についた状態で
潛水産卵(潜水産卵)水中で 接泥産卵[挿泥産卵]産卵管を泥や砂利に突き刺しながら
打空産卵空中を叩くやうに(ように) 附着産卵(付着産卵)水面の植物などに卵をくっつけながら
打泥産卵泥を叩くやうに(ように) 遊離性産卵止まったまま卵を落とす
打水産卵
→聯續打水産卵(連続打水産卵)
→間歇打水産卵
水面を叩くやうに(ように)
(聯續(連続)で—)
(間歇で—)
植物組織内産卵
→植物枯死組織内産卵
植物の茎などに
(枯れた植物の—)
 

トンボは、1度交尾すると終はり(終わり)ではなく、違ふ(違う)相手と何度も交尾し、卵を産む。
アキアカネやウスバキトンボなど(の♀)は、人に捕へ(捕え)られるとびっくりして卵を産んでしまふ(しまう)こともあるが、この卵は無精卵であることが多い。
※無精卵とは、受精してゐない(いない)卵のこと。受精してゐない(いない)ので孵化しない。


逆立ち

    

トンボは暑くなると逆立ちする(腹を上へ向けた姿勢をとる)。
トンボは變温動物(変温動物)であるため、氣温(気温)が大きく體温(体温)に影響する。
※氣温(気温)によって體温(体温)が變化(変化)する動物を變温動物(変温動物)、 體温(体温)を一定に保つ動物を恒温動物といふ(いう)
逆立ちすることで、日光の當たる(当たる)面積を減らし、體温(体温)が上がりすぎないようにしてゐる(いる)のである。

ちょっとした小ネタだが、トンボが逆立ちしてゐる(いる)といふ(いう)ことは、 (自分でどう感じてゐるか(いるか)は別にして) それだけ暑いといふ(いう)ことなので、熱中症に氣を附ける(気を付ける)1つの目安にはなる。
トンボが逆立ちしてゐる(いる)時に クラクラしてきたら、 それは 直射日光による一時的な症状であらう(あろう)から 日陰で休めば 囘復(回復)するだらう(だらう)けれども、 トンボが逆立ちしてゐない(いない)のに クラクラした場合、相當(相当)重症と思はれる(思われる)ので 早く病院へ行きなさい、と。
※醫學的(医学的)な話ではないので、あくまでも 參考情報(参考情報)程度に。ただ、いづれ(いずれ)にせよ 炎天下での無理は禁物。


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