トンボの誕生と分類


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トンボの出現

初めてこの世に現れたトンボ(の親戚)は、今から約3億年前(地球誕生の約43億年後)の古生代石炭紀に出現した "メガネウラ"であったとされてゐる(いる)

メガネウラは、結節や縁紋を持ってをらず(おらず)、トンボである條件(条件)は滿たして(満たして)ゐない(いない)。 分類上は 昆蟲綱(昆虫綱)原蜻蛉目(原トンボ目)Protodonataといふ(いう)位置附け(位置付け)である。
又、メガネウラは存在が確認されてゐる(いる)昆蟲(昆虫)(絕滅種(絶滅種)を含む)の中では世界最大で、 翅を開くと約700mmもの大きさがあったといふ(いう)
メガネウラ科Meganeuridaeのメガネウラ・モニイMeganeura monyi、メガネウロプシス・ペルミアーナMeganeuropsis permianaなど 約20種類が化石で發見(発見)されてゐる(いる)が、その中には現存するトンボと同じやうな(ような)大きさのものもゐる(いる)
翅は、トンボのようにしっかりとしたつくりではなかったため、あまり上手く飛べなかったと考へられてゐる(考えられている)。 1m近い大きさだと、體重(体重)が 相當(相当)輕く(軽く)ないと 滯空出來ない(滞空出来ない)計算になるらしいが、 それは あくまでも 現在の大氣(大気)においての話で、當時は(当時は)酸素濃度が高く 現在とは大きく環境が異なってゐた(いた)ので、それが關係(関係)あるのではないかといふ(いう)見解もある。
幼蟲(幼虫)の化石はほとんど見つかってゐない(いない)らしいが、原トンボのヤゴは現存するトンボのヤゴに比べ毛深く、 カゲロウの幼蟲(幼虫)と同じ特徴もいくつか持ってゐる(いる)といふ(いう)。生活場所は水中だらう(だろう)と推測されてゐる(いる)

原トンボは、ペルム紀(二疊紀(二畳紀))の始めごろまでが特に榮え(栄え)、ジュラ紀まで存在してゐた(いた)と考へられてゐる(考えられている)
蜻蛉目との關係(関係)については大きく分けて2つの説がある(右の圖(右の図))。
1つ目は、原蜻蛉目の昆蟲(昆虫)が現在のトンボの祖先であるといふ(いう)説。 2つ目は、原蜻蛉目の昆蟲(昆虫)はトンボの直接の祖先ではないが 共通の祖先を持つ生き物であるといふ(いう)説。 説2を支持する研究者の方が多いやう(よう)だが。

蜻蛉目の昆蟲(昆虫)は、原均翅亞目(原均翅亜目)Protozygoptera・原不均翅亞目(原不均翅亜目)Protanisoptera が ペルム紀(二疊紀(二畳紀))に、古均翅亞目(古均翅亜目)Archizygoptera・均翅亞目(均翅亜目)Zygoptera・ ムカシトンボ亞目(ムカシトンボ亜目)Anisozygoptera は三疊紀(三畳紀)、不均翅亞目(不均翅亜目)Anisoptera は ジュラ紀に出現したとされてゐる(いる)。(それぞれ、その年代の地層で 最も古いと思われる化石が發見(発見)されてゐる(いる)。)
原蜻蛉目の昆蟲(昆虫)と違ひ(違い)、翅脈は複雜(複雑)に 張り巡らされ、激しくはゞたいても(はばたいても)耐へられる(耐えられる)つくりになってゐる(いる)
※原均翅亞目(原均翅亜目)・原不均翅亞目(原不均翅亜目)・古均翅亞目(古均翅亜目)は、 化石でのみ その存在が確認されてゐる(いる)


トンボの分類

生物學(生物学)上のトンボの分類は、
動物界Animalia 節足動物門(節足動物門)Arthropoda 昆蟲綱(昆虫綱)Insecta 蜻蛉目[トンボ目]Odonata

生物の分類單位(単位)には、次のものがある。(太字が特に重要なもの。斜体のものは植物を分類するときに使はれる(使われる)。)  大きいものから、

 上界  亞界(亜界) 下界 上門  亞門(亜門) 上綱  亞綱(亜綱) 下綱 區(区)
  上目  亞目(亜目) 下目 小目 上科  亞科(亜科) 上族 族 亞族(亜族) 系  (属) 亞属(亜属)
   種羣(種群) 種亞羣(種亜群) 上種  亞種(亜種)  變種(変種) 亞變種(亜変種) 型 亞品種(亜品種) (個體(個体))

細かい分類階級があまり使はれ(使われ)ないのは、「○○目○○科○○屬(属)の○○」と言ったはうが(ほうが)簡單(簡単)で、 十分 それで 種が特定出來る(出来る)から。
また、研究者によって扱ひ方(扱い方)に違ひ(違い)があり、統一されてゐない(いない)といふ(いう)事情もある。

"種(しゅ)"とは、同じ特徴や習性を持ち その♂と♀が自然に交尾し その子孫が正常に(何代も)育っていくことができる 個體羣(個体群)のこと。
"亞種(亜種)"とは、"種"を 住む場所・生態・體(体)の模樣(模様)などの 微妙な違ひ(違い)で さらに細かく分けたもの。
そして、同じ特徴を持った"種"をまとめたものが"屬(属)"、同じ特徴を持った"屬(属)"をまとめたものが"科"、 同じ特徴を持った"科"をまとめたものが"目"である。

上界をドメインまたは帝、界を領、亞綱(亜綱)を丘綱、下綱を丘亞綱(丘亜綱)、族を聯(連)、 區(区)を羣(群)、型を品種と呼ぶこともある。(品種が動物に使はれる(使われる)ことはあまりないやう(よう)だが。)
(群)の位置は決まってをらず(おらず)、下綱と上目の間に置かれずに、屬(属)と種の間や目と科の間などに置かれることもある。

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學名(学名)

學名(学名)は、ラテン語で書かれた世界共通の生物の名前(※1)。 アキアカネやオニヤンマなどの日本で一般的に使はれてゐる(使われている)名前は和名といふ(いう)
※1…動物の學名(学名)の扱ひ方(扱い方)については、"國際動物命名規約(国際動物命名規約)"で規定されてゐる(いる)。植物や菌やウィルスには別の命名規約がある。

學名(学名)は1種類につき1つの名前しかないやうに(ように)管理されてゐる(いる)(※2)。
しかし、手違ひ(手違い)や研究者の扱ひ(扱い)の違ひ(違い)によって、同じ種に複數(複数)の學名(学名)がついてしまふ(しまう)こともある。 これらは異名同種(シノニム[synonym]※3)と呼ばれる。
また、異名同種とは逆に 違ふ(違う)種に 同じ學名(学名)がついてしまふ(しまう)こともある。これらは同名異種(ホモニム[homonym]※3)と呼ばれる。
※2…國際動物命名規約(国際動物命名規約)で管理されてゐる(いる)のは、 上科・科・亞科(亜科)・族・亞族(亜族)・屬(属)・亞属(亜属)・種・亞種(亜種)
※3…それぞれ、ラテン語の"synonymia(=同義語、シュノニュミア)"、"homonymia(=同音異義、ホモニュミア)"が語源か?

種又は亞種(亜種)を示す學名(学名)は、斜體(斜体)(※4)で 屬名(属名)種小名(種名)亞種小名(亞種名)(亜種小名(亜種名)、その後に命名者名(命名者名)出版年號(出版年号)を書く。 屬名(属名)は最初の1文字だけ大文字で書く。命名者名(命名者名)と出版年號(出版年号)は略されることも多い。
命名者名(命名者名)と出版年號(出版年号)が括弧書きにされていることもあるが、 これは、命名者が最初に發表(発表)した種の屬する(属する)屬名(属名)が變更(変更)になったか、 その種が別の屬(属)に移された場合につけられるもの。
※4…嚴密(厳密)には、"斜體(斜体)"ではなく"他の文章と異なる字體(字体)"ださうだ(そうだ)。 實際(実際)、斜體(斜体)で書かれることが多いが。

<例> ムカシトンボ Epiophlebia superstes (Selys,1889)
命名者名(命名者名)・出版年號(出版年号)が括弧書きなので、屬名(属名)が變更(変更)されたことが分かる。 事実(事實)、ムカシトンボ屬(ムカシトンボ属)に分類される前はPalaeophlebia(Palaeophlebia属)に分類されてゐた(いた)
<例> ホンサナエ屬[ほんさなへ屬](ホンサナエ属)の一種 Gomphus (Hylogomphus) adelphus Selys,1858
ホンサナエ屬(ホンサナエ属)GomphusHylogomphus亞属(Hylogomphus亜属)に屬する(属する)adelphus。 亞属名(亜属名)を入れる場合は、屬名(属名)の後に括弧書き+斜體(斜体)(※4)で書く。

亞種(亜種)を持たない種の學名(学名)には、亞種小名(亜種小名)をつけない。(※5)
Anax parthenopeといふ(いう)種のうち、日本列島に生息するものは 亞種(亜種)ギンヤンマAnax parthenope juliusとして分けられた。 亞種(亜種)であるギンヤンマAnax p. j.には 亞種小名(亜種小名)がある。 そして、ギンヤンマAnax p. j.ではないAnax parthenopeを、亞種(亜種)の階級でギンヤンマAnax p. j.と 區別(区別)する爲(為)Anax parthenopeにも亞種小名(亜種小名)がつけられたが、 この亞種小名(亜種小名)は種小名と同じものである。
Anax parthenope parthenopeのやうな(ような)種小名と同じ亞種小名(亜種小名)を持つ亞種(亜種)は、原名亞種(基亞種)(原名亜種(基亜種)と呼ばれる。
※5…種には屬名(属名)+種小名の二名式命名法(二名法)、 亞種(亜種)には屬名(属名)+種小名+亞種小名(亜種小名)三名式命名法(三名法)を用ゐる(用いる)

<例> 原名亞種(原名亜種) Anax parthenope parthenope Selys,1839
<例> 亞種(亜種) ギンヤンマ Anax parthenope julius Brauer,1865

種小名が決まってゐない(いない)種は、種小名の代わりにsp.と書く。同樣(同様)に亞種小名(亜種小名)が決まってゐない(いない)場合は、ssp.と書く。
sp.ssp.は、種小名・亞種小名(亜種小名)を略すときにも使はれる(使われる)
sp.ssp.は、それぞれ、種を表すspecies・亞種(亜種)を表すsubspeciesの略。

<例> アカネ屬(アカネ属)の一種 Sympetrum sp.
<例> スキバチョウトンボ[すきばてふとんぼ]の一亞種(一亜種) Rhyothemis phyllis ssp.

學名(学名)(の綴り)が變更(変更)されることはほとんどない。 命名者が綴りを間違へて(間違えて)ゐて(いて)も、一度發表(発表)してしまへば(しまえば)原則 變更(変更)は出來ない(出来ない)
學名(学名)が變更(変更)されるのは、すでに存在する名前を新種につけてしまったとき(=同名異種)や、 屬名(属名)を變更(変更)した際に 屬名(属名)と種小名の性が一致していなかったとき(※6)ぐらゐ(ぐらい)である。
※6…ラテン語の名詞には性(女性形・男性形・中性形)があり、名詞に合はせて(合わせて)修飾する語の綴りが少し變はる(変わる)。 名詞である屬名(属名)にかゝる(かかる)種小名は、屬名(属名)の性と一致させる必要がある(種小名が名詞である場合を除く)。

<例> ヨツボシトンボ Libellula quadrimaculata asahinai Schmidt,1957
libellula・quadri-・maculataは、それぞれ、ラテン語でトンボ(女性名詞)・4つの・斑點(斑点)(女性形)、 asahinaは固有名詞、-iは人名に由來(由来)することを表す。 maculataは、屬名(属名)が男性名詞のときはmaculatus、中性名詞のときはmaculatumといふ(いう)形に變化(変化)する。
例外もあるが、-aは女性形、-usは男性形、-umは中性形であることが多い。

屬名(属名)・亞屬名(亞属名)・種名・亞種名(亜種名)・型名を除く學名(学名)は、 屬名(属名)や種小名のやうに(ように)斜體(斜体)(※4)では書かないが、最初の1文字は大文字で書く。

<例> 昆蟲綱(昆虫綱) Insecta
<例> 蜻蛉目 Odonata
<例> 不均翅亞目(不均翅亜目) Anisoptera

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